山口仙太郎は
昔、いろんな人にいろんなあだ名を付けた。
あだ名名人と言ってもいい位沢山の人に付けた。
付けたあだ名が広まっていくのは嬉しかった。
俺こそがあだ名名人。
俺こそがナンバー1。
仙太郎はいつしか天狗になっていたのであった。
ある日転校生が都会からやってきた。
名前を矢崎宅次郎と言った。
矢崎宅次郎は都会的な口調で、
転校してきて3日目には人気者になっていた。
そして宅次郎はあだ名をつける名人だった。
先日まで仙太郎がつけたあだ名で呼ばれていた同級生達が、
どんどん宅次郎に付けられたあだ名に改名していたのであった。
仙太郎は焦った。
このままでは、あだ名名人の座から陥落してしまう・・
恐れていたことが現実となった。
1ヵ月後仙太郎が付けたあだ名は、全て宅次郎がつけたものに
塗り替えられてしまった。
仙太郎は泣いた。
泣きながら、あだ名の付いていない唯一の人物
宅次郎のあだ名を悔し紛れにつけた。
あだ名「せんたく」
自分の名前を入れたところに、
仙太郎の悔しさが滲み出ている。
しかし宅次郎はその後死ぬまで、せんたくと呼ばれたのであった。
仙太郎おおきに。