思いにきび

今日、鼻に思いニキビができた。
中学校の頃に、
都会から女子の転校生が来た。
埼玉辺りから。
大都会の人の割に、
素朴な雰囲気があった。

当初は別になんとも思わなかったが、
なんかのはずみで、
夜も眠れない位の恋心を抱いてしまったのであった。
授業中も気になって仕方がない。

用もないのにチラチラ10分おきに見てしまう。
話しかけたいけど、異常な程意識してしまい、
話し掛けることなどとてもできない。
でも、それだけでよかった。

そんな状況で半年過ぎた頃、
クラスのお局さんのような女子が、
「お前吉田さん(仮名)の事いっつも見てるだろ?
お前吉田さんの事が好きだろ?」
人間失格の太宰治のような心境になった。
心に重い除夜の鐘が鳴り響いた。
ゴーン。。
やばい。ばれた。
どうしよう。

除夜の鐘を聞きながら、
なんとか平静を装って、
「全然、好きじゃないよ」
絞り出すようにとっさに嘘を言った。
その会話を聞いていた、お局グループの女子が集まってきて、
取り囲まれる形になった。
その女子の全員が、
「私もそんな気がしてたー」
とか
「絶対好きだよね?好きじゃないわけないよね?」
「告白しなよ」
と、執拗に追い込み始めるのであった。

こっちも必死になってきて、
ムキになって違うと言い張るもんだから、
逆に
「あー!やっぱり好きなんだー」
この女共いいかげんにしろよ、
と思いながら、近くに吉田さんがいないか確認した。
いなかった
よかった。聞かれなかった。

翌日起きると、
一度もできたことがなかったニキビが
鼻にできていた。
大そう大きなニキビだった。
自分は肌が綺麗で色白だったから、
教室に入ったとたん、
ニキビを今度は男どもにからかわれた。
男どものあとは、あの女どもだ。

「あー!思いニキビができてるー
あー!やっぱりそうなんだー」

おい、おまえ、いい加減にしろ!
吉田さんがそこにいるじゃないか、
ばれたらどうしてくれるんだ!
心の中で叫んでいた。
何も悪い事してないのに、
悪い事してるみたいな気持ちになった。

その騒ぎに気がついて
吉田さんがこっちを見た。
そして微笑んだ。
女神のようだった。

吉田さんよ。永遠に。

emi